2018年12月27日
コインパーキングの市場トレンド
1.年々増え続けるコインパーキング
コインパーキングの第1号は1991年にオープンしました。バブル崩壊に突入し、マンションなど建てても売れなくなってきたこの時期、一時的な土地活用に最適だったのがコインパーキング経営だったのです。その後、利用者の増大に伴ってコインパーキングは増え続け、現在では街のいたる所でコインパーキングを目にするようになりました。
ポイント
日本パーキングビジネス協会が発行している「コイン式自動車駐車場市場に関する実態分析調査2015年版」によると、2015年4月のコインパーキング箇所数は、65,000箇所で2007年度の約1.8倍、1年間で約3,700カ所ずつ増えてきている計算になります。
駐車場箇所数の推移
コインパーキング数が最も多いのは東京都で、17,550箇所あり全国の約27%を占めています。次いで大阪府が8290箇所(約13%)、神奈川県が6340箇所(約10%)となり、3都府県で全体のほぼ50%となります。なお、全国の駅数は1万件弱、主要コンビニの店舗数は、約5万7800店舗(2017年3月)であり、コインパーキング箇所数はこれらをはるかに超えていることがわかります。
2.コインパーキングが増え続ける理由
さて、なぜコインパーキングはこれほど増え続けているのでしょうか?最大の理由はコインパーキングの需要に対して、まだまだ供給不足だからと言えるでしょう。
クルマで出かけた際に、コインパーキングが見つからないので探し回ったり、見つかったけれども満車だったという経験がある方は結構多いのではないでしょうか。ショウワ電技研の本社も横浜アリーナの近くにオフィスを構えていますが、横浜アリーナでイベントがある日には、近隣の駐車場はどこも満車になり、駐車場を探し回っているドライバーさんをよく見かけます。
・クルマの保有台数の推移
クルマの保有台数は年々増え続けて、この30年間で約2倍となりましたが、2003年以降は前年比2%以下の微増となっています。
乗用車 | 昨年対比 | ||
平成元年 | 1989年 | 30,712,558 | |
平成2年 | 1990年 | 32,937,813 | 107.2% |
平成3年 | 1991年 | 35,151,831 | 106.7% |
平成4年 | 1992年 | 37,310,632 | 106.1% |
平成5年 | 1993年 | 39,164,550 | 105.0% |
平成6年 | 1994年 | 41,060,611 | 104.8% |
平成7年 | 1995年 | 42,956,339 | 104.6% |
平成8年 | 1996年 | 45,068,530 | 104.9% |
平成9年 | 1997年 | 47,214,826 | 104.8% |
平成10年 | 1998年 | 48,684,206 | 103.1% |
平成11年 | 1999年 | 49,968,149 | 102.6% |
平成12年 | 2000年 | 51,222,129 | 102.5% |
平成13年 | 2001年 | 52,449,354 | 102.4% |
平成14年 | 2002年 | 53,487,293 | 102.0% |
平成15年 | 2003年 | 54,471,376 | 101.8% |
平成16年 | 2004年 | 55,288,124 | 101.5% |
平成17年 | 2005年 | 56,288,256 | 101.8% |
平成18年 | 2006年 | 57,097,670 | 101.4% |
平成19年 | 2007年 | 57,510,360 | 100.7% |
平成20年 | 2008年 | 57,551,248 | 100.1% |
平成21年 | 2009年 | 57,682,475 | 100.2% |
平成22年 | 2010年 | 57,902,835 | 100.4% |
平成23年 | 2011年 | 58,139,471 | 100.4% |
平成24年 | 2012年 | 58,729,343 | 101.0% |
平成25年 | 2013年 | 59,357,223 | 101.1% |
平成26年 | 2014年 | 60,051,338 | 101.2% |
平成27年 | 2015年 | 60,517,249 | 100.8% |
平成28年 | 2016年 | 60,831,892 | 100.5% |
平成29年 | 2017年 | 61,253,300 | 100.7% |
各年3月末現在 |
・車室数の推移
駐車場車室数の推移
一方、コインパーキングの個所数も増えていますが、車室の数も同様に推移しています。
2015年の乗用車保有台数60,517,249台を2015年の駐車場車室数1,180,000で割ると1車室あたり、約51台の保有台数となります。このように計算してみるとまだまだコインパーキング不足と言えると思います。
3.小型コインパーキングが市場のトレンド
最近、コインパーキング業界のトレンドとして駐車場の小型化が進んでいます。
「駐車場車室数の推移」を「駐車場個所数の推移」で割り1箇所当たりの車室数を算出すると、19.6台(2007)、20.4台(2011)、18.2台(2015)と、2011年から2015年にかけて1箇所当たり2台も減少していることがわかります。
当社が運営しているショウワパークの個所数と台数の推移も見てみましょう。
ショウワパークの駐車場1箇所あたりの車室数
2011年 | 2015年 | 2018年 | |
駐車場個所数 | 369 | 541 | 601 |
車室数 | 4808 | 6846 | 7572 |
1箇所あたり車室数 | 13.0 | 12.6 | 12.5 |
ショウワパークにおいても業界のトレンド同様に、駐車場の小型化が進んでいることがわかります。
4.小型コインパーキングビジネスの動向
駐車場の小型化が進むとコインパーキングのビジネスはどのようになっていくのでしょうか? 車室数の違いによるコインパーキングの経営を比較してみましょう。
車室数の違いによるコインパーキング損益シミュレーション
売上 1車室5万円 |
1台当たり賃料 | 合計賃料 | 売上-賃料 | |
20台のコインパーキング | 1,000,000 | 30,000 | 600,000 | 400,000 |
10台のコインパーキング | 500,000 | 30,000 | 300,000 | 200,000 |
5台のコインパーキング | 250,000 | 30,000 | 150,000 | 100,000 |
※初期工事費用は数百万円単位でかかりますが考慮していません。
車室数が20台、10台、5台の3つのコインパーキングに、1車室あたり5万円の売上、賃料が3万円を仮定すると、「売上-賃料」は5台が最も少なく、台数が多い駐車場ほど多くなります。この「売上-賃料」から、緊急コールセンター代、集金回収代、機器のメンテナンス代、電気代などの諸経費を差し引いたものが利益となります。このように、コインパーキングの小型化が進むと利益額は少なくなり、薄利多売になっていくことは明らかです。
このような背景から、小型のコインパーキングでは新たな運営形態が登場してきました。初期コストを極力抑えるために、従来のゲート式や機器が昇降してクルマを留めるフラップ式ではなく、前払い方式のチケット式を採用するコインパーキングが増えてきています。
チケット式でも精算機は必要ですが、クルマを検知する機器や機器が昇降してクルマを留めるフラップが不要のため、初期コストを抑えることができます。
一方、クルマを検知する機器がないため、駐車料金は時間制ではなく固定利用料になるため、短時間の利用者には割高になるケースがあります。また、クルマを留める機器がないことから、不正利用者が出てくるという課題もあります。
成功ポイント
・コインパーキングの箇所数は年々増加傾向にあるが、コインパーキングの小型化が進み、1箇所あたりの車室数は減少傾向にある。
・コインパーキングの小型化が進み、1箇所あたりの売上・利益は減少傾向にある。
・コインパーキングの小型化に伴い、前払いのチケット式を採用するところが増えてきた。
次回はコインパーキングのチケット式について詳しくご紹介します。