2019年5月21日
コインパーキング放置車両とは
1.不法投棄はやめましょう。
日本人は、世界の人々からモラルの高さを評価されていると感じますが、ゴミを棄てることに抵抗が薄い人がごくわずかにですが居ます。役所のHPなどを見ると、「不法投棄をやめましょう。」というタイトルで、ほとんどの自治体が不法投棄防止の啓発活動を行っています。不法投棄は、自分が出したゴミを他人の所に捨てる行為で、自分だけ良ければ他人はどうなっても良いという非常に身勝手な行為です。刑事罰としてはかなり重い5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金または併科(同時に二つ以上の刑に処すること。)になっています。(法人の場合は3億円以下の罰金です。)
にもかかわらず、弊社が運営するコインパーキングにも様々なゴミが捨てられています。今回はその中でも一番迷惑な「放置車両(特に廃棄車両)」について処分の方法などをご案内いたします。
2.コインパーキングに車を放置する理由
さて、前述した通り、コインパーキング運営で対応に困っている大きな問題のひとつに『放置車両』があります。多数のコインパーキングを運営している弊社でも、毎年多くの放置車両の対応に追われています。『放置車両』とはコインパーキングに停めたまま、いつになってもドライバーが戻ってこない車両のことで、放置される理由は千差万別ですが、主な理由は以下の4つに絞られます。
①盗難車の捨て逃げだった。
②事故を起こしてしまい、自走出来ないために仮置きした。
➂駐車後、所有者が入院などで戻れない事情が発生した。
④車検が切れ車両も古いため、捨てる目的で駐車した。
弊社における対応事例の7割を占めるのが④の理由によるものでしたが、そのほとんどのケースにおいて、調べても所有者までたどり着くことができずに弊社で車を処分することになりました。
車は安い買い物ではないですし、必要だからこそ所有していた車両を簡単に放置、破棄する気持ちは理解しがたいものです。確かに車を廃車するためには費用や手続きが生じます。通常、解体費用1~2万円、運搬費用5千円~1万円、リサイクル料金は普通自動車が約1万円で、合計2.5~4万円の出費となります。
どのように廃車してよいのかわからない、手続きが面倒という方もいるとは思いますが、正しく廃車することで支払い済の自動車税など「還付金」が戻ってくる可能性もあります。また、自分の所有物に責任を持ち、他人や世の中に迷惑をかけないことは社会人の最低限のマナーとも言えます。「要らなくなった、簡単に捨てられないだろうか?」などと考える前に、調べたり相談して正式な方法で廃車することをお勧めします。「駐車場などに放置してしまった」車両が自分のものであったことがわかった場合、手痛い費用や処分が課せられることを肝に銘じておきましょう。
3.放置車両はどうなるの?
1台の放置車両に対して調査を開始してから最終処分にいたるまでは、最低でも半年間を要します。
1:放置車両を発見。
2:警察へ通報し、盗難車であることが確認。
(盗難の場合は警察にて引き上げられるが、届け出がない場合は民事不介入)
3:ナンバープレートから陸運局(普通車以上)もしくは軽自動車検査協会(軽車両)へ所有者特定のために登録事項証明書を請求。
4:所有者住所へ出庫を促す書面送付(配達証明)。
(連絡があれば出庫に向けての話し合い、なければ次の対応へ。)
5:所有者住所へ内容証明の送付と車両に対して最終警告を提示
(住所に本人がいない場合は、市役所・区役所へ住民票の第三者請求。)
手順だけ見ると簡易に思えるかもしれませんが、各項目に猶予期間や具体的な対応方法が法的整備されていないため、コインパーキング業界の慣例に従い、また弁護士にアドバイスをもらいないがら、1台ずつ対応していくことになり、かなりの人手と時間がかかります。そして、所有者が特定された場合は、放置期間中の駐車料金や調査・対応にかかった諸経費、レッカー移動して廃車に至るまでの料金などは全て所有者が支払うことになります。車種や期間にもよりますが数十万円の費用が発生する場合もあります。
4.放置車両を発生させない工夫
多くのコインパーキング運営会社では最大「48時間」までの駐車をお願いしています。回転率を上げて売上を増やすという理由もありますが、一番大きな理由は犯罪防止です。同じ場所に長時間駐車していますと、車上荒らしや盗難など多くの犯罪に合うリスクが高くなります。よって、犯罪を抑制しかつ放置リスクも低くする目的で、駐車は最大「48時間」まで!をひとつの目安としています。
全国数万ヶ所のコインパーキングのうち、7~8割の物件がロック板を使った機械式駐車場です。ご存知の通り、駐車すると、駐車枠の中央付近で運転席にかぶる程度の位置に金属製の板が上昇して車両を固定します。このロック板式駐車場の多くは、遠隔システムで入庫時間や支払い状況を確認することができ、駐車最大時間を「48時間」に設定しておくことにより、長期駐車の車室や駐車時間に対して入金不足の車室などが一目瞭然にわかります。
しかし問題なのはゲート式の駐車場です。大型の商業施設などでよく使われている方式で、収容台数が多い物件に多いタイプです。ロック板式と異なり、入庫後どのスペースに駐車するかはわからないため、遠隔システムなどで1台ずつの駐車状況を把握することができません。よって巡回回数を増やしたり、定期的な駐車車両の撮影により、同車室に停め続けている車両をチェックするなど現場に出向いての確認が必要になります。
5.放置車両の実例を見てみよう
安易な考えで車両を放置すると、予想もしていなかった大金を請求されるとともに、悪質な場合は業務妨害として被害届を出される場合もあり、民事のみならず刑事罰として逮捕に至るケースもあります。先に述べた法的整備に詳細な決まり事がなくとも、該当する内容の法律を適用できるケースは数多くあり、弊社管理部は、各地域の警察署と連携して『放置車両撲滅』を進めています。
放置車両対応の実例
- 2017年7月 チケット式駐車場内に長期車両発見。
- 約2ヶ月に渡り印をつけて未出庫を確認。
- 2017年8月 警告文を貼って対応するが動きなしのため、
- ①ナンバープレートから陸運局へ登録事項証明書を開示要求。
- ②所有者の住所へ出庫を促す文面を配達証明にて送付。
- 2017年9月 所有者からの連絡がなく、車両を動かした形跡もなし。
- 出庫に関しての内容証明を送付。
- 2017年10月 内容証明送付後も連絡なし。
- 自宅住所へ直接訪問し、所有者のご家族に接触。
- 現場の写真などをお見せして事情説明。
- 2017年11月 初めて所有者から連絡有。
- 駐車料金が高額になってすぐには支払えないとの電話。
- 2017年12月 支払うべき駐車料金が準備できたとの電話。
- 現場で所有者と会い、立合いの元に出庫確認。
- 駐車料金は出庫前日に銀行振り込みにて確認済。
本件は、法的措置までは至りませんでしたが、自宅訪問しても本人や家族に会えずに拒否をされた場合は簡易裁判所への訴訟案件となります。管理会社としても、所有者の同意なく車両を処分することはできないため、簡易裁判所に車両の所有権移譲の申し立てをし、受理されてからレッカー移動や廃車処分を行います。
このように、1台の放置車両を出庫・処分するまでには最低でも半年がかかります。調査費や人件費なども含めて請求されることを考えると、安易な考えで放置することによって、自分自身だけでなく家族を含めた多くの人に多大な迷惑をかけてしまうことを重々認識しておきましょう。
成功ポイント
・安易な気持ちで、コインパーキングに車を放置・破棄はやめましょう。
・さまざまな手段で所有者が特定され、放置期間中の駐車料金、調査・対応にかかった諸経費など多額の費用が請求されるとともに、場合によっては刑事罰の対象となることもあります。
・経営側は放置車両を発生させないために、最大「48時間」までの駐車を掲げ、遠隔監視や現場確認増強で放置車両を見逃さない工夫をしていきましょう。
・弊社では各地域の警察署と連携して『放置車両撲滅』を進めています。